2018年度試行プロジェクト採択案
「“視聴覚障がい者も楽しめる花火“の新たな取組み」
第1回ワークショップ

第1回ワークショップレポート|2018年7月24日

  • 日本花火推進協力会 小勝会長(左)と司会進行の小松理事(右)

花火大会に先立ち、7月24日に大曲商工会議所にて、事前に募集した秋田県在住の12名の視聴覚障がい者の方々と一般社団法人日本花火推進協力会の会員花火師とのワークショップを開催いたしました。

ワークショップの司会進行は、今回の「視聴覚障がい者のための花火」を開発する理事の小松忠信(株式会社小松煙火工業 代表取締役社長)です。また秋田県の会員である久米川和行(株式会社和火屋 代表取締役社長)と齋藤健太郎(響屋大曲煙火株式会社 代表取締役社長)そして会長の小勝敏克(株式会社丸玉屋 代表取締役社長)も参加し、視聴覚障がい者の方々にとって、安心できる会場運営とはどんなことなのか、会場内のユニバーサルデザインなど運営面に関する要望や、どのようにしたら花火を楽しめるのか、などをテーマに意見交換を行いました。

視覚障がい者の方々にとっての花火

視覚障がい者の方々は、どの様に花火を楽しんでいるのだろうか、という疑問については、「見えないけれど、音や振動を体で感じることで楽しんでいる」「かつて見えていた頃の記憶をたぐりながら、音や振動に合わせ花火のイメージを作り上げて楽しんでいる」という方が多くいらっしゃいました。

また、「最近の花火は形が色々あるようだけど、イメージしにくいので、触ってわかる模型や点図などがあったらより楽しめる」という意見には、視覚障がい者にとって、イメージを形づくるという事は大変な想像力が必要になり、それを手助けできるツールの必要性を強く感じました。花火の模擬玉展示や花火が開いた形を手で触って感じ取れるような仕組みができないか、検討を進めていきます。それ以外にも、点字のプログラムの充実や、「周りの雑音などで、いつ花火があがるのか分からないので、実況があると良い」「花火師による解説があるとより楽しめる」など、花火自体の情報についてももっと知りたいをいう皆さんの切実な思いを痛感しました。

会場運営については、「昔は花火大会に行っていたが、今は周りに迷惑がかかるので、行きたいけれど言い出しにくい。」「会場は足場が悪いので、暗くなると、足下が不安」「トイレに行くのが1人だと難しいので、花火大会には行きたいが足が遠のく」会場の導線や、障がい者用トイレの数など厳しい意見もいただきました。

聴覚障がい者の方々にとっての花火

ご家族や友人と一緒に花火大会を楽しんでおられ、目で見る花火だけでなく、視覚障がいの方と同じように「花火の振動を体で感じて楽しんでいる」という方が多くいらっしゃいました。

また、「アナウンスが聞こえないので、字幕があると嬉しい」「花火の情報を字幕やアプリで配信して欲しい」など、会場での情報入手の方法が検討課題として挙げられました。会場運営については、視覚障がいと方々と同様にトイレへの不安や「暗い会場で迷子になってしまった際、コミュニケーションが取りにくくて不安になる」など、会場内のユニバーサルデザインに関する要望をいただきました。

そんな中、「花火の音が大きすぎて耳が痛くなるので、音の小さい花火があると良い」という意見をいただく一方で「もっとアナウンスや音楽を大きくして欲しい」といった意見もあり、産まれつき聴こえない方もいれば、難聴で補聴器を使うことである程度聞こえる方など、様々な方がいらっしゃる中、「誰もが楽しめる花火」を作り出すことの難しさを再認識しました。

限られた時間でしたが、参加された12名の方々は、わたくし達が想像していた以上に、様々な方法で花火を楽しんでおり、それ故に、多くの要望や改善点などの意見をいただき、課題と取り組みについては、期待の声も多くいただきました。

今回いただいた様々な要望については、感じ方や考え方のヒントを基に検討を重ね、できる限り本番で実現することを目指していきます。

ワークショップに参加した会員花火師の感想

  • 響屋大曲煙火株式会社 齋藤社長

響屋大曲煙火株式会社 齋藤社長

視聴覚障がいの方々も花火を楽しんで頂けていることが、作り手としてすごく嬉しかったです。しかし、現状の花火大会は障がい者にとって、安心して楽しめる花火大会ではない事が、残念で、悔しいという思いでした。

視覚障がい者の方々へは、音声や点字表示など、視覚情報を代替する、聴覚障がい者の方々へは、目で見てわかる方法で情報を提供する心遣いが必要。そして、私たちが製作している花火をより楽しんでもらえるよう、弱視の方には光の強い花火、難聴者には高い音や強い音などで音やリズムを楽しんでもらえる様な花火を開発する予定です。

今回ワークショップに参加して、”視聴覚障がい”とひとくくりにまとめてしまいがちですが、人それぞれ症状や程度が違うため、一つの花火大会で全ての方々が心から楽しんでもらえる花火を打上げるのは難しいことを痛感しました。そこをひとつひとつクリアして行きたいという思いを強くしました。

第2回ワークショップ|2018年9月15日について

第2回のワークショップでは、第1回で出た様々な要望の実現へ向け、試作花火の検証を予定しています。また、障がいを補完する技術として、以下の検証も予定しています。

① 音の波形を振動に変換する“振動型ウェアラブル装置”の検証。
② 音声帯域の明瞭度をアップさせた“難聴者用スピーカー”の検証。
③ 朗読劇の脚本について、表現方法のヒアリング。

※花火師、技術メーカー担当者や脚本家なども交えながらのインタビューを実施する予定となります。