ワークショップは一般社団法人アプローズが運営するアプローズ南青山という、フラワーアレンジメントを行っている障がいのある方の就労支援事業所で行われました。この事業所は東京都指定障がい福祉サービス事業所(就労継続支援B型)です。
大人の発達障がいなど、障がいのある方が仲間とともにフラワーアレンジメントの技術を学びながら、はたらく場で、 障がいがある方やそのご家族が、地域で孤立せずにいきいきと暮らし、 はたらき、自らの夢を叶えることをサポートするために作られました。

今回のワークショップに参加していただいたのは、そこで働く13名の方々。
そして講師を務めるのは一般社団法人日本花火推進協力会の会員である、日本の名人花火師の方々です。

講師紹介

  • 紅屋青木煙火店
    青木 昭夫 氏
  • 丸玉屋
    小勝 敏克 氏
  • 小松煙火工業
    小松 忠信 氏

初回の講師は長野の株式会社紅屋青木煙火店代表取締役社長の青木昭夫氏。
青木社長は紅屋青木煙火店の3代目であり、全国の花火大会入賞者の常連。地元長野では諏訪湖祭湖上花火大会の他、多くの花火大会を手掛け、花火名人集団「一般社団法人日本煙火芸術協会」の会長でもあります。 大曲や土浦の全国花火競技大会にて「内閣総理大臣賞」も受賞している花火界のトップランナーです。 

もう一人は東京の株式会社丸玉屋代表取締役社長の小勝敏克氏。
小勝社長は世界最大級の花火専用コンピュータインフラを保有し、東京では「東京湾大華火祭」「世田谷区たまがわ花火大会」を始め、横浜の「神奈川新聞花火大会」のグランドフィナーレなど、国内外の多くの花火大会や花火ショーのプロデュースと演出を手掛ける花火界の先端演出家です。今回は総合的な「花火デザイン監修」という立場で講師をしてもらいました。

3回目の講師は秋田の株式会社小松煙火工業代表取締役社長の小松忠信氏。
小松煙火工業の5代目であり、東北地方の花火名人として、日本三大花火の一つである全国花火競技会「大曲の花火」で中心的な役割を果たす存在です。東北地区中心に全国の花火大会、イベント、競技会の花火製造や打ち上げを担当し、平成25年第87回全国花火競技大会「大曲の花火」では内閣総理大臣賞を受賞しています。

2回目と4回目の講師を担当したのは東京の株式会社丸玉屋取締役営業部長の岩野成氏。
株式会社丸玉屋で小勝社長の下、国内の多くの花火大会やアトラクション花火の演出を数多く手がける花火業界の若き人材です。

ワークショップレポート

ワークショップ1回目2017年6月2日

この日の内容は「花火の歴史」「日本の花火について、製造の技術」「花火の種類」「現代の花火、エンターテイメント型花火」「デザイン課題の提示」でした。

初回は長野から青木煙火店の青木社長と東京の丸玉屋の小勝社長が講師です。
青木社長がこの日のためにスライドを用意してくださり、花火の起源のこと、日本で初めて花火を上げたのは徳川家康であること、それを日本に持ち込んだのはイギリスだったことなど、興味深いお話からはじまりました。

小勝社長からは花火の製造の話を伺いました。
花火玉の模型を使いながら、玉の中の仕組みがどうなっているか、どうやって玉が開く時間をコントロールしているかなどの技術的なこともわかりやすく説明してくれました。

花火には赤や青や緑などたくさんの色がありますが、その色は無限に作れるそうです。そしてその微妙な色のだし方が、それぞれの花火師さんの工夫のしどころでもあり特徴にもなっているということでした。

質問の時間には色の作り方や花火が燃えている時間や、尾を引くものと引かないものの違いなど、たくさんの質問がだされました。
皆さんそれぞれに自分がこれから描くデザインを思い描きながら、花火でどんなことができるのかとても熱心な質疑応答が行われました。

短い時間ではありましたが、質問も出きったところでこの日のワークショップは終了。
参加者の皆さんはそれぞれにデザイン画を描いていただくことになりました。

ワークショップ2回目2017年6月9日

この日の内容は「スターマイン・ブーケ表現方法の説明」「質疑応答」「選考デザインの発表」「選考デザイン画へのアドバイス」

この日のワークショップは丸玉屋の岩野さんが担当されました。
前回のワークショップを終えて、13名の参加者の皆さんから18個のデザインが提出されました。

最初に皆さんからご自分のデザインを発表してもらいました。どんなことを思ってそのデザインを作ったのか、どんな工夫をしたのか、中にはデザイン画だけではなく、演出案まで考えられたものもあり、短い時間で本当に色々なことを学んでいただけたことがよくわかりました。

そのあとは岩野さんから丸玉屋が得意とする音楽花火のことや、その音楽花火を演出するために欠かせない、スターマインという小型の連続花火の演出方法を中心にワークショップが進んでいきました。

皆さんが画いてきてくれたデザインは1枚の画でしたが、それを数分のプログラムとして演出するのに最適なのがスターマインです。どんな玉を組み合わせて作るのか、それでどんな演出が可能になるのかなどの説明を聞き、そのあとにそれぞれ自分たちのデザインを60秒のプログラムとしてブラッシュアップするためのディスカッションが続きました。

そしてこの日の最後に、実際に花火を製造する花火師たちと検討した結果、6個の作品が選ばれました。
本当にどの作品も工夫があり、選ぶのはとても大変だったそうです。
花火師では思いつかないような発想が随所に盛り込まれていて、「これは是非やってみたい!」と思わせるものもたくさんあり、花火師たちにとってもとても新鮮なものだったそうです。

そして、選ばれた6作品のデザイナーは、次回のワークショップまでに1分程度のプログラムとして、それぞれがアイディアを考えてくる宿題がだされました。

ワークショップ3回目2017年6月13日

この日の内容は「演出方法(プログラム・シーケンス・音楽など)の説明」「デザインへのアドバイス、ブラッシュアップ」

いよいよこの日は演出案についてのディスカッションです。
秋田から小松煙火工業の小松社長と東京の丸玉屋の小勝社長は2度目の講師です。

この日は冒頭から選ばれた作品をプログラム・シーケンスにするためのディスカッションから始まりました。
まずは考えてきてくれた宿題をもとに、どんな演出をしたいかを発表していただき、それを元にどんな色にしていくかなど、どういう玉を組み合わせると思ったようなデザインになるか、60秒をどう演出していくかなど花火の専門家とのディスカッションが続きました。

最初のデザインの時から音楽と組み合わせた演出で提案していた作品もあり、それをさらにブラッシュアップさせるために色々なアイディアが花火師、デザイナー双方から出されました。

花火師もなんとか皆さんの思いに答えようと一生懸命知恵を絞り、いくつかは課題として持ち帰り検討していただくことになりました。
これまで作ったことのない花火を新しくつくることも決まり、講師もデザイナーもみなとても楽しそうなディスカッションになりました。

新しい花火を作るときは、試作品を作り実際に打ち上げて実験してみるのだそうです。すごいことですね。

一つ一つの作品について十分に議論ができ、いくつかについてはさらなる宿題も出されて、この日のワークショップは終了しました。

ワークショップ4回目2017年6月16日

この日の内容はこの日の内容は「演出方法へのアドバイス、ブラッシュアップ、最終仕上げ」

いよいよワークショップも最終回となりました。
この日の講師は再び丸玉屋の岩野さんです。
前回のワークショップででた様々なアイディアを、青木社長、小松社長、小勝社長がそれぞれ持ち帰り、どうやってデザインを花火として再現させるのか、花火師の知恵を出し合って実現の方法を検討していただいていました。
その内容を岩野さんから説明いただきながら、さらなるブラッシュアップが続きます。

ワークショップも4回目になると、参加者の皆さんからも花火の専門用語が飛び出してきます。どうやら毎日事業所の休憩時間などに、みんなで花火について色々な話をしたり、ご自分でも相当勉強されたりしていたようです。
最初はなかなか自分の考えが伝えられなかった人も、花火師さんと専門用語を交えながらどんどん発言するようになっていて、見ている事業所のスタッフたちもその変わりように少し驚いたそうです。

これまでの事業所の風景は、皆さんが黙々とまじめに仕事をされていて比較的静かな雰囲気だったそうですが、ワークショップを重ねるごとに事業所での会話も増え、なんとなくみんなの中に一体感が生まれてくる様子だったということです。
やはり自分のアイディアを発表したり、そこにコメントをもらったりすることで交流が深まったのでしょうか?

そして最後に岩野さんからお話がありました。
これまで花火師たちは自分たちの世界で自分たちの技を磨くことに一生懸命だったけれど、今回花火とは全く関係のない方々と交流をし、その方たちの意見を元に花火を作るという、全く新しい試みによって、自分たちにはない世界を感じることがとても新鮮で面白かったということです。

全4回のワークショップはこれですべて終了しました。
さて、8月19日にはいったいどんな花火ができあがっているのでしょうか?
もちろん花火デザイナーたちは、花火大会当日には会場で自分たちの花火を観覧していただきます。

後日その感想なども掲載していきますので、お楽しみに。