世界に誇る日本の芸術花火

日本ではじめて花火を見たのは徳川家康といわれており、その頃から愛知県三河市は花火の盛んな地域となっています。
また秋田、宮城、福島、茨城、新潟、山梨、長野、東京、神奈川、静岡、福岡、大分、鹿児島をはじめ日本各地での花火製造は長い歴史と伝統に支えられて現在にいたっています。
一方、庶民の楽しみとなった日本の花火大会のルーツは享保18年(1733年)の「両国川開き花火」と言われています。
この前年である享保17年は全国的な飢饉と疫病の流行で、多くの方が亡くなりました。そこで徳川吉宗が死者の魂の慰霊と疫病退散を祈願して、この川開きの日に水神際を行いました。
これがきっかけとなり、毎年同じ日に川開きの花火大会を行うようになり、それが現在の隅田川花火大会に繋がってきております。このとき最初に活躍した花火師が「鍵屋弥兵衛」その後鍵屋から分家した「玉屋市兵衛」という花火師が江戸で活躍したことから、花火のかけ声が「たまや〜」「かぎや〜」となったと言うことです。

花火玉の大きさと開花高度

号数 外径(cm) 開花高度(m) 開花時の直径(m)
2.5 6.9 80 50
3 8.6 120 100
4 11.5 150 120
5 14.4 200 150
6 17.3 220 180
7 20.2 250 200
8 23.0 280 250
10(尺玉) 28.5 300 280
20(二尺玉) 58.0 450 450
30(三尺玉) 86.0 600 600

花火玉の仕組み

光輝き四方八方に飛び散る花火の一つ一つの光の粒を「星」といいます。その星を紙でできた玉皮という同心円のお椀の内側に隙間なく均等に並べます。その内側に「星」を破裂させるための割薬という火薬を入れて導火線を装着します。完成した花火玉に打上火薬を装着し、花火を打ち上げる筒に装填します。打上火薬に点火すると、同時に導火線にも着火し、花火玉が上空に打ちあがります。導火線が割薬に着火すると、無数の「星」が四方八方に飛び大輪の花を夜空に咲かせます。

日本の花火の特色

花火は全世界で製造され、消費されておりますが、どこでも花火は同じ物というわけではありません。
国により様々な特色があります。その中でも日本の花火は繊細で大変芸術性の高い物であると言われています。
日本の花火には3つの大きな特徴があります。

1.玉の座り

花火玉はそれぞれ号数に応じて打上高度が変わってきますが、一番高く上がった瞬間に開花するのが最良と言われています。これを「玉の座りが良い」花火と言います。

2.盆と肩

それぞれの花火玉は号数によって開花の直径が違っています。
開花したときにそれぞれの玉の号数ごとに想定されている最大直径で開花するものを「盆が良い」花火と言います。また開花したとき、玉に詰められた星が中心から放射状に同じ距離に飛び散り360度の真円に広がった状態を「肩が広い」花火といいます。

3.消え口

花火が開花すると、そこに詰められた「星」が光りますが、この「星」が一斉に同じタイミングで光り、消えるときも一斉に同じタイミングでパッと消えることを、「消え口が良い」花火と言います。

日本の花火師たちはこの3つの特色を、何世代にもわたり研究し、改良し、現在もなおその技を磨き続けています。

日本の打ち上げ花火の特色(公益社団法人日本煙火協会作成 花火入門 平成29年度版より抜粋)

日本の花火、特に代表的割物花火「芯入菊花型花火」は、世界で最も精巧で華麗な花火といわれており、以下の三点が最大の特徴です。

  • 1.真ん丸く大きく整然と開花する。
  • 2.花弁の一つひとつの星が変化(変色)する。
  • 3.同心円に二重、三重の芯を重ねることができる。

日本の花火玉の形状は球形ですが欧米の玉は基本的に円筒形。中に入る星も日本は球状、欧米は円筒状です。日本の星は昔の飴菓子の変わり玉のように、異なった色の火薬を重ねます。欧米では火薬をプレスして固めるのが一般的です。

日本の花火は右図のように球形の玉皮(容器)の中に星を球状にならべ、中央に割り薬(割り火薬)をつめ、玉皮の外周を丈夫な紙で何周も貼り固めて仕上げます。
中央の割り薬の威力と紙の貼り具合とのバランスがとれていることにより、星は均一に飛び散り真ん丸く開花するわけです。
この紙の貼り具合が均一でないと、丸く開かず、いびつな形の花になります。
円筒形の花火は上空で四方八方に星を飛散しないため、真ん丸くは開きません。
欧米の花火は日本の花火とは違う色合いや、上空で何段にも咲く珍しい玉などが特徴です。小さい寸法の玉ではどちらも派手さの甲乙はつけられませんが、5号玉(15cm)以上は大きくなるほど、日本の花火の精巧で華麗な表現力が顕著に現れます。

また、日本の花火師は和紙を巧みに利用して、二重、三重に同心円(芯入花火)をつくる技術を完成しました。どこから見ても真ん丸で色の変化と消え際のよさ、という究極の調和美を完成させたのは、日本人の持つ美意識と職人気質の成果といえましょう。
文字どおり先人を含む多くの花火師の血と汗と知恵の結晶です。最近では四重芯、五重芯にも挑戦しており、日本の花火師達の芸術的探究心に限りはありません。

出典元:
http://www.hanabi-jpa.jp/data/booklet.html

【四重芯変化菊】 紅屋青木煙火店(長野)

四重の異なる芯を精緻な技術で花火玉に込める日本芸術花火の極み。
各芯に込められた星が変化、四重の星は一瞬にして多様に変化する。

【昇り小花五色ダリア】 株式会社 ホソヤエンタープライズ(東京)

花火が打ちあがるとともに、小花が下からパッパッパと咲きながらどんどん上に昇って行き、頂上でダリヤのように鮮やかな5色の花が夜空に咲きます。

【八重芯変化菊】 菅野煙火店(福島)

多重芯花火。花火玉の中に八重、三重、四重、五重もの多重な花火の層を持ち、それぞれの層の星が2~3色にも変化し、その結果夜空に咲く花火はほんの2秒ほどの一瞬に6色から12色にも変化します。これこそは世界に誇る日本の芸術花火の極みです。

花火写真:小野里 公成